東京オリンピック 2020 計画書(150ページ)を熟読してみました。

雑学・時事ネタ

2013.10.04(Fri)

支持率の低さや震災の影響など賛否両論あったオリンピック招致は、蓋を開けてみれば「東京」への圧倒的票数により決定しました。これにより2020年の開催までを目標にして、オリンピック関連の事業が東京を中心に展開されていくことになりますね。

招致決定後、様々なメディアで取り上げられている東京オリンピック2020、その計画書(TOKYO 2020 立候補ファイル 150ページ)を熟読してみました。結果、知り得た情報をコラムとして書かさせていただきます。

以下、気になった4つのポイントです。

§1、予算はどんな分野にどれくらい必要なのか?具体的にまとめました。
§2、テレビ放映権料ってどれくらい発生してるの?驚きの金額!
§3、貴社もなれる?!オリンピックスポンサー。どれくらい契約料が必要なのか?
§4、都市開発事業・宿泊観光業界のビジネス勝機

 

§1 「予算はどんな分野にどれくらい必要なのか?具体的にまとめました。」

2020年の開催までには、まだ7年あることから一本調子でオリンピック景気が沸いていくわけではないが、今の段階でオリンピック開催により、どんな業界や企業に動きがあるのかを把握することは何かしら役に立つのではと思われます。

⇒オリンピック大会運営にかかる直接的な予算としては、3,400億円。加えて、競技会場や選手村の建設、東京都内にあるスポーツ施設の改修、セキュリティ、通信インフラ、医療施設の整備など、大会に隣接する予算も含めると、約8,000億円が必要になる見通しとのことです。

以下、項目ごとに拾ってみました。

東京オリンピック2020の予算計画
■オリンピック大会の直接的予算………3,412億円
(主な項目)
 ・競技会場の賃貸費、運営費(768億円)
 ・選手村等の賃貸費、運営費(185億円)
 ・IT、電気通信、インターネット(420億円)
 ・人件費(239億円)
 ・輸送にかかる費用(232億円)
 ・パラリンピック大会費用(159億円)
 ・セキュリティ(112億円)
 ・広告宣伝費(103億円)

■オリンピック大会の間接的予算………4,887億円
(主な項目)
 ・競技会場の改修、建設(3,092億円)
 ・選手村の建設(1,079億円)
 ・通信インフラ(27億円)
 ・セキュリティ(96億円)
 ・医療(13億円)
 ・文化、教育(89億円)
 ・市内装飾(14億円)
───────────────────────
(参照:TOKYO 2020立候補ファイル)

1兆円近い予算が動くことになりますね!

またこれら以外にも、空港、交通機関、周辺道路、ホテル、観光施設の整備、オリンピック関連商品の販売、観光客による飲食店やサービス業などの需要拡大までを含めると、オリンピックによる経済効果は、3兆円以上とも言われております。納得できます。
ダイレクトに恩恵を受けやすいのは、建設業と観光業界だと思いますが、IT関連やセキュリティ関連に投じられる資金も大きいことが伺えます。

とはいえ、この予算、税金からまかなわれるのでしょうかね?
次のセクションでまとめてみました。

 

§2、テレビ放映権料ってどれくらい発生してるの?驚きの金額!

近年のオリンピックは「商業主義」と批判があります。ただ、その一方で大会の財務内容を見てみると、国の補助金(税金)などには依存せずに、収支が確立され運営されている事が伺えました。

オリンピックは4年に1回開催される世界的なスポーツの祭典で、もともとは非営利で行われるイベントであり大会の収支はプラスマイナスゼロになるように計画されているものであるといわれております(IOCより)。ただ、§1でも書きましたが、直接的な予算だけでも3,000億円を超す大イベントなだけに、その運営資金に絡んでは、ビジネスとしての性質も持ち合わせていると思います。

大会の大きな収入は「テレビ放映料」「スポンサー契約料」「チケット売上」の3つです。

東京オリンピック2020の収入計画
・IOC負担金(テレビ放映権) ……… 790億円(23%)─┐
・TOPスポンサーシップ ……………… 335億円(10%)─┼→テレビ、スポンサー関連の収入は約6割
・ローカルスポンサーシップ………… 820億円(24%)─┘
・オフィシャルサプライヤー………… 107億円( 3%)
・チケット売上………………………… 772億円(23%)
・ライセンシング……………………… 139億円( 4%)
・寄付金………………………………… 108億円( 3%)
・資産処分……………………………… 32億円( 1%)
・その他………………………………… 306億円( 9%)
──────────────────────────
収入合計………………………………3,411億円
(参照:TOKYO 2020立候補ファイル)

近年のオリンピックでは、特にテレビの影響力が非常に大きくなっており、1964年の東京大会から世界中継(衛星中継)がスタートし、現在では200ヶ国以上に配信され、ロンドン大会の開会式では、世界の視聴者数が9億人を超すほどとなったと報告されております。

そのテレビ放映権を一括管理しているのが、IOC(国際オリンピック委員会)であり、その下部組織にオリンピック放送機構(IBC)という団体が更にあり、大会期間中に国際放送センターを設置して、各競技場からの映像を世界のテレビ局に配信する役割を担っているそうです。

世界各国のテレビ局は、IOCに放映権料を納めIBCより映像を受けるという仕組みが確立しており、しっかりとした管理がなされていると感じました。

また、徴収された放映権料は、開催国のオリンピック委員会に約半分を分配しているとの事で、それが上記の放映権料にあたります。

因みに、これまでの大会毎の放映権料は以下の通りとなります。

オリンピック放映権料の推移
(夏季大会)
・1992年 バルセロナ(スペイン)…………4億4,100万ドル
・1996年 アトランタ(米国)………………5億4,600万ドル
・2000年 シドニー(豪州)…………………7億9,700万ドル
・2004年 アテネ(ギリシャ)………………7億3,300万ドル
・2008年 北京(中国)………………………8億5,100万ドル

(冬季大会)
・1994年 リレハンメル(ノルウェー)……2億2,900万ドル
・1998年 長野(日本)………………………3億 800万ドル
・2002年 ソルトレイク(米国)……………4億4,300万ドル
・2006年 トリノ(イタリア)………………4億 600万ドル
・2010年 バンクーバ(カナダ)……………4億1,400万ドル

開催の度に値上げしてきており、IOCにおいては大会運営収入の柱にしてきている事が伺えます。その影響もあるのか、各国のテレビ局では、従来の無料放送だけでは、高騰した放映権の支払いを賄う事が出来ず、一部内容を有料放送へ移行することですべての人たちが平等にテレビ観戦できないという弊害も生まれてきている事実があります。近年のオリンピックが「商業主義」と言われる所以です。
しかし、一方でオリンピック開催地が税金による運営に頼らなくても済むようになったという利点があり、商業主義が必ずしも悪いという訳ではないとも捉えることが出来ました。

因みにですが、IOCの収益構造資料もございましたので、下記記します。

国際オリンピック委員会(IOC)の収益構造
・テレビ放映権…………47%
・スポンサーシップ……45%
・チケット……………… 5%
・ライセンシング……… 3%
─────────────────
(参照:IOC公式資料)

こうしてみると、オリンピックは、チケットやライセンスグッズなどの販売よりも『放映権』による収入に大きく依存していることが伺えます(スポンサーシップもですが...こちらは次の§にて)。

テレビ局は、オリンピックの利害関係者であり、様々な番組の中でオリンピックを盛り上げようとしている事も頷けますね。

2020年までには、テレビ局の視聴形態も多様化し、インターネット放送やスマートフォン、タブレット端末からでも見れるようになると思いますが、それは、番組放映権を獲得したテレビ局の系列でなければ実現できない事から、今後はテレビ局と携帯キャリアとの提携が進んで行くことになるかもしれませんね。

 

§3、貴社もなれる?!オリンピックスポンサー。どれくらい契約料が必要なのか?

さて、§2の後半でも書きましたが、スポンサーシップは、放映権と並んでオリンピックの運営を資金面で支える存在です。スポンサーとなった企業は、夏季と冬季のオリンピックが開催される4年間を一つの契約期間として、五輪マークをはじめとしたオリンピックの知的財産(ブランド)を独占的に利用する権利が与えられます。広告やサービス名の中などで利用されているのでおなじみですね。

そんなスポンサーですが、体系としては「TOPスポンサーシップ」と「国内スポンサーシップ」の2種類があります。「TOPスポンサーシップ」は、1業種につき世界で1社に限定して、オリンピックのブランドを利用することができる最上級のスポンサーで、ロンドン大会に向けた 2009~2012年の期間には、以下の 11社が契約をしています。

TOPスポンサー企業(2009~2012年)
・コカコーラ(Coca cola) ……………ノンアルコール飲料
・エイサー(acer)………………………コンピュータ機器
・アトス(Atos Origin) ………………IT
・ゼネラル・エレクトリック(GE)……電気機器
・マクドナルド(McDonalds) …………フードサービス
・オメガ(OMEGA) ………………………時計
・パナソニック(Panasonic) …………AV機器
・サムスン(Samsung) …………………無線通信
・ビザ(VISA)……………………………個人支払システム
・P&G……………………………………家庭用品
・ダウ・ケミカル(DOW)………………総合化学

IOCの資料によりますと、これら11社が支払ったスポンサー料は、総額で9億5,700万ドル。一社あたりの平均は8,700万ドル(約87億円)。いい感じの金額です。

そんなTOPスポンサーシップですが、多額の資金を積めば、どんな企業でもなれるものではなく、IOCが交渉の直接窓口になることで、オリンピックの運営を、技術やサービスの面でサポートできる企業を対象に決められているとの事です。また、IOCでは、スポンサーの数を少数に絞り込み、独占的で強い権利を与えることにより、契約料を引き上げてきているとも...。

TOPスポンサー契約料収入の推移(IOC)

契約期間 契約企業数 契約金総額
1985~1988年 世界で9社 9,600万ドル
1989~1992年 世界で12社 1億7,200万ドル
1993~1996年 世界で10社 2億7,900万ドル
1997~2000年 世界で11社 5億7,900万ドル
2001~2004年 世界で11社 6億6,300万ドル
2005~2008年 世界で12社 8億6,600万ドル
2009~2012年 世界で11社 9億5,700万ドル
近年の契約料は1985~1988年に比べ、9倍以上に高騰していますね。
この契約料の内、約50%がIOCの収入となり、残りの50%を夏季大会33.4%、冬季大会16.6%の割合で分配します。


さて、「TOKYO 2020」におけるローカルスポンサー枠「国内スポンサーシップ」は?といいますと、こちらは開催国内のみでのマーケティングが認められている枠で、開催地にとっての分配率が高いため、「TOKYO 2020」においての主力の収入源になる見通しとの事です。

その国内スポンサーシップですが、更に3つに細分化されるとの事で、「ローカルパートナー」「ローカルスポンサー」「ローカルサプライヤー」があります。原則的には、各製品カテゴリーで1社ずつの契約になる様です。

「TOKYO 2020」の国内スポンサー制度
●ローカルパートナー(10カテゴリー)
・自動車
・ビール、ワイン、低アルコール飲料
・通信サービス・固定電話
・損害保険
・生命保険
・米、野菜、果実、農産物
・石油
・銀行・投資信託・証券会社
・荷物輸送サービス
・インターネット検索サイト
─────────────────────────
○収入見込み額……500億円(1社あたり平均50億円)


●ローカルスポンサー(15カテゴリー)
・航空旅客サービス
・スポーツアパレル
・事務機器
・新聞(日本語)
・お菓子
・調味料
・鉄道
・フォーマルウェア
・警備
・オフィス家具・文具
・スポーツクラブ
・仮設建設物
・食用油
・麺類
・乳製品、牛乳
─────────────────────────
○収入見込み額……225億円(1社あたり平均15億円)


●ローカルサプライヤー(17カテゴリー)
・人材派遣
・チケットサービス
・クリーニング
・コンタクトレンズ
・寝具/マットレス
・レンタル備品
・和装
・入浴剤
・施設サービス
・印刷/出版
・観光バス(2社)
・フォトサービス(2社)
・英会話教室/翻訳・通訳サービス(2社)
・流通(2社)
・法律/税務コンサル(2社)
・競技用備品(2社)
・旅行会社(3社)
─────────────────────────
○収入見込み額……95億円(1社あたり平均3.8億円)

ローカルスポンサーの製品カテゴリーは、TOPスポンサーと重ならない様に配慮されている様で、「1業種1スポンサー」の方針が徹底されていることが伺えました。もちろん、契約する企業にとっては、オリンピックブランド価値を独占的に活用する事ができるので、その方針はあるべきものだと考えられます。

反面、それ以外の企業が「オリンピック」の名称を商品名やサービス名、広告の中に使う事は、全て便乗商法として取り締まられる対象になってしまうことが考えられ、「オリンピック開催記念セール」などを表記して集客を行う事はNGであると考えられます。

 

 

§4、都市開発事業・宿泊観光業界のビジネス勝機

さて、コラムも終盤を迎えましたが、最後にダイレクトに恩恵を受けやすい建設業者と観光業界のビジネスについて書いてみます。

オリンピックに便乗した都市開発事業
オリンピックの準備にかかる間接的な予算としては、5,000億円近い資金が投じられる計画になってます。その中でも、晴海地区に建設される予定の「選手村」。

計画によると、オリンピックとパラリンピックの選手や運営関係者が滞在するための住宅施設として、高層マンションが24棟(個室数で約1万室分)整備される予定。これら施設には、太陽光発電などの再生エネルギー設備、屋上緑化や側面緑化、高速で移動できるエレベーター、最新のITシステムなどが導入される。

東京都が所有する土地の中から、用地の選定は既に済んでおり、建設が民間業者(大手ゼネコンなど)の資金(約1,000億円)によって行われ、オリンピック開催中は、これらの施設を大会組織委員会が賃借して利用するが、大会終了後は、住居部分の改装を行い、一般住宅として分譲することにより、建設資金を回収する計画との事です。

オリンピック閉会後の問題となる施設の管理運営について、うまく計画されているのと感じました。また、同時に東京都が1990年代から進めてきた「豊洲・晴海開発整備計画」とリンクしており、オリンピック開催決定により「臨界副都心の価値が上昇するのでは?」と言われ、周辺のマンションの購入検討者が増えてきているといわれております。


宿泊施設業界で期待されるオリンピック効果
過去のオリンピック開催地を調べてみると、開催の決定直後から世界の注目が向いて、旅行者が増え始めるため、開催年までの7年間にわたり、ホテルの稼動率が高まる傾向にある。それに伴い、予約が取りにくくなるため、宿泊相場も次第に上昇していくとの見方が。

計画書によると東京には、2020年の競技会場中心から、半径10km以内に8万6千室、50km以内に14万室のホテル客室(3~5つ星、730施設)があり、2011年時点の平均宿泊金額は、以下のようになっています。

オリンピック会場周辺のホテル相場(東京)
  3つ星 4つ星 5つ星
シングル(1名) 9,536円 13,125円 29,217円
ダブル/ツイン(2名) 15,676円 23,451円 41,309円
スイート(2名) 31,788円 64,929円 114,136円
(参照:2020招致計画委員会による調査(2011年時点))

宿泊施設業界にとって、オリンピック開催がプラスの材料であることは間違いないが、それが、どこまでの収益向上に繋がるかは読みにくい事情もあるみたいです。

というのは、東京都内の主要ホテルでは、オリンピック開催が決定する前から、客室稼動率が80%以上を超えており、宿泊者の受け入れを増やせる枠が限られているため。昨年頃から、日本のホテル稼動率が高まっている背景には、主に東南アジアからの外国人旅行者が増えていることが影響している様です。

国別にみた訪日旅行者数の推移(2012年前期→2013年前期)
  2012年前期 2013年前期 増減率
韓国 95.1万人 132.0万人 +38.4%
中国 73.5万人 53.6万人 -27.0%
台湾 68.9万人 102.9万人 +49.4%
香港 23.4万人 33.6万人 +43.1%
タイ 13.2万人 20.2万人 +52.7%
シンガポール 6.7万人 8.3万人 +23.4%
マレーシア 6.1万人 7.1万人 +16.5%
インドネシア 4.3万人 6.5万人 +50.1%
フィリピン 4.3万人 5.6万人 +28.2%
ベトナム 2.6万人 4.0万人 +52.1%
インド 3.4万人 3.8万人 +12.7%
豪州 10.5万人 13.1万人 +25.1%
米国 36.1万人 39.7万人 + 9.9%
カナダ 6.8万人 7.5万人 +10.5%
英国 8.6万人 9.4万人 + 9.2%
フランス 5.9万人 7.3万人 +23.3%
ドイツ 5.0万人 5.8万人 +14.6%
ロシア 2.1万人 2.9万人 +34.1%
その他 25.9万人 31.6万人 +22.0%
総数 403万人 495万人 +22.8%
(参照:日本政府観光局(JNTO))

これからホテルを新設するという案もあるが、宿泊施設業界にとってのオリンピック商機は、開催年(2020年)に間に合わせることではなく、開催地の決定~開催年にかけて、宿泊客を増やすことにあるため、今からの工事では遅いと考えます。

そのため、東京都内だけでは受け入れられない外国人旅行者は、他の地域にあるホテルや旅館へと流れていくことが期待できる。これから2020年にかけては、日本を初めて訪れる、アジアからの旅行者を取り込むことが、観光業界にとっての商機になる。外国人旅行者の主なターゲットは、欧米人よりも、アジア人であることを意識して、観光サービスを充実させていくべきだと考えます。

 

§最後に…


さて、前回の東京五輪が開催された1964年の時とは、大会運営の仕組みが大きく異なっており、公式スポンサー以外の業者が、直接的には関わりにくい面があるが、トータルでは1兆円近い資金が動く大イベントだけに、日本全体にとっての経済効果は高いと感じます。それを五輪バブルで終わらせてしまうのではなく、大会終了後も、日本の有益な資産やノウハウとして残していくことが肝要なのだろうと考えました。